死者32人、行方不明者14人(7月17日現在)。大災害となった九州北部の集中豪雨から1週間あまり。土砂崩れで甚大な被害を出した福岡県朝倉市の黒川地域は、倒壊した家屋の周囲に押し寄せた巨木や2m級の岩が転がり、今なお豪雨の爪痕を残している。
集中豪雨は季節の変わり目に多く、とりわけ夏場によく起きるとされる。日本の陸地は70%が山間部であり、朝倉市の惨状は、誰にとっても他人ごとではない。
今回、死者の多くは家の中で発見されているが、問題は、1時間に100mm以上という集中豪雨の場合、特別警報が出た時点で避難行動自体が危険なことだ。防災・危機管理アドバイザーで防災システム研究所所長の山村武彦氏が語る。
「濁流は短時間で押し寄せます。もはや“降ってからでは遅い”と考えるべきです。気象庁は5日ほど前から『警報予告』を出しますので、その時点で避難に向けて備えましょう。各市町村が発表しているハザードマップで氾濫の危険がある河川や土砂災害の恐れのある区域を把握しておき、警報予告が出たら早めに、念のために避難する。早期避難に勝る対策はないのです」
やむなく豪雨となってから避難する際は、服装や“歩き方”にも注意が必要だと、山村氏が続ける。
「木やトタンが流れてくるので、長袖・長ズボンを着用しましょう。長靴は土砂や水が入ると足を取られる危険があるので避けるべき。ヒモをきつく縛ることができる運動靴の方がいいです。軍手など手袋をして、懐中電灯を持ってカッパを着る。集中豪雨の際、傘は意味がありません。また、道路が冠水している場合、マンホールの蓋が外れていることに気づかず、落下する危険があります。棒を持ち、地面を確認しながら歩きましょう」
ちなみに、車の移動は避けたい。1時間に20mm以上の降雨量の場合、ワイパーの効果がなく、冠水した道路を走るとブレーキがきかなくなる恐れがあるという。
「避難が遅れ、どうしても家から出ることができない場合は、“垂直避難”といって、斜面と反対側の2階の部屋に避難しましょう。また、1階のトイレや浴室などの排水溝から泥水が逆流する『排水溝逆流浸水』が発生し、室内から泥水が噴き出す恐れもある。事前に排水溝は塞ふさいでおいた方がいいでしょう」(山村氏)
手軽にできるのは、ごみ袋を利用した方法。袋を2枚重ねにして、中に20リットルほど水を入れ、空気を抜いて縛る。それを1階のトイレ便器の中や、浴室、浴槽の排水溝の上にのせると、簡易の泥水逆流防止対策になるという。
「自然災害を事前に防ぐのは、不可能に近い。悲観的に準備し、楽観的に生活することが大事です」(山村氏)
知識と準備が生死を分ける。
※女性セブン2017年8月3日号