夏の高校野球シーズンが到来し、全国の地方大会で熱戦が繰り広げられている。熊本で波乱があった。センバツに出場した熊本工業が3回戦でノーシードの菊池に敗れたのだ。大会前、120年の歴史がある同校を訪れた際、エース右腕である山口翔はこう話していた。
「注目してもらっている今だからこそ、ワンチャンスを掴んで、もう一度甲子園に出たい。秀岳館をギャフンと言わせたいです」
名前の挙がった秀岳館は、3年前に鍛治舎(かじしゃ)巧監督が就任し、昨春から甲子園に3季連続出場、3大会連続ベスト4に進出している。
打撃の神様と呼ばれた川上哲治(熊本工業OB)を生んだ熊本は、高校野球の盛んな地域。公立校や地元出身者を熱烈に応援する一方、外様には冷たい。
社会人野球・パナソニックの監督を務め、NHKの高校野球解説も務めていた鍛治舎監督は、秀岳館に着任するまで率いていた大阪・枚方ボーイズの選手たちをこぞって熊本に動員。“大阪第二代表”と揶揄され、地元ファンから野次られながらも、一昨年秋から県内では無敗だ。この夏のチームは川端健斗と田浦文丸という、共に140キロを優に越える直球を武器とする左腕がいる。
熊本工業が敗れた今、秀岳館の力は突出しているように見えるが、一矢報いるのは、どこだろうか?
●文/柳川悠二(ノンフィクションライター/『永遠のPL学園』著者)
※週刊ポスト2017年8月4日号