日本の歴史上、権力者たちは特権的な「養生」を行っていた。時代を彩った偉人の特権的な“裏ワザ健康法”を紹介しよう。
徳川家康の孫であり、テレビドラマでもおなじみの“黄門様”こと徳川光圀(享年72)は、ラーメンを日本で最初に食べたとされる人物で、新しい食材、料理に対する好奇心が強かった。ヨーグルト、ビスケット、ジャムなど、明治になってやっと普及するようになった食べ物を17世紀の江戸時代に食べている。
そんな黄門様が一般庶民のために、治療法や薬について医者に書かせた当時のベストセラー本『救民妙薬集』の内容が興味深い。
「ネズミに噛まれたときは、猫の糞を糊でやわらげてつける」「ネズミの小便が目に入ったときは、猫のよだれを眼にさす」という具合にネズミの害はすべて猫で治すという“荒療治”が記されている。『日本史偉人「健康長寿法」』の著書がある作家の森村宗冬氏はこう語る。
「ほかにものどに刺さったトゲを取るのに、〈生きた蜘蛛を紙に包んで動くようにして、のどに張りつけて4時間放置〉といった奇想天外なものもあります。当時、流布していた民間療法を集めたのでしょう。一方でなるほどと思える治療法や薬の使い方の記述もたくさんあり、そうした養生を実践していたからこそ、黄門様は当時としては長生きしたのでしょう」
※SAPIO2017年8月号