絶対的権力と富を手に入れた独裁者が、最後に求めるのが不老不死の肉体だ。己の命のためなら手段を選ばない。秦の始皇帝の「生への執着」はどんなものだったのか。
秦の始皇帝は老いと死を極端に恐れており、強く不老不死を求めたことが「史記」に記されている。始皇帝は不老不死の秘薬を研究させ、「辰砂(しんしゃ)」を基本原料とした“丹薬”と呼ばれる秘薬を作り上げた。
しかし、主原料となる辰砂とは、水銀が硫黄と結びついた「硫化水銀」で、不老不死の効能はもちろん得ることはできなかった。猛毒の水銀を含む丹薬を飲んだ始皇帝は50歳で死去している。
歴史作家の島崎晋氏は「古代中国では『水銀』は聖なる薬でした。始皇帝以後、『水銀』を服用し、中毒死した皇帝が何人も史書に残されています」
※SAPIO2017年8月号