台湾の主体性を重視する蔡英文政権の誕生と新しい独立への敵・中国の強大化という相矛盾する事態に戸惑いながら、台湾独立運動も大きな岐路を迎えている。
取材に応じた人々に、私は図々しく「あなたは何人ですか」とアイデンティティを尋ね続けた。
「台湾人でもあり、日本人でもある」と答える人も「日本人に限りなく近い台湾人」と答える人もいた。「日台人」という人もいた。
グー・クワンミンは「非常に困った質問でございますね。私は21歳まで日本人だったわけですから」と言って、暫らく言葉を切って、語った。
「台湾の独立を信念とする以上、私は台湾人ですが、最も打ち解けられて居心地がいいのは日本人の友達と一緒にいるときです」
独立運動の大物の一人の黄昭堂には、新聞社の特派員時代、ときどき台北の歓楽街に呼び出されてはウイスキーを飲まされ、少年時代の日本語教育に加え、戦後の独立運動で日本語の文章を書き続けて鍛えた流暢極まりない日本語で、延々と台湾の歴史や独立運動の意義を聞かされた。