欧米をはじめ海外では、日本よりもはるかに防犯意識が高い国が多い。それは街づくりに表れており、住宅街から公園、トイレ、歩道橋、駐車場に至るまで、「入りにくく、見えやすい」、つまり犯行をあきらめさせる構造になっている。
そう話すのは世界92か国を巡り、『写真でわかる世界の防犯――遺跡・デザイン・まちづくり』(小学館)を出版した、立正大学文学部社会学科教授の小宮信夫さんだ。
まず、公園に関していえば、子供向けエリアと大人向けエリアを明確に分けているケースが多い。遊具は子供向けエリアに集中させ、そこをフェンスで囲んでいる。フェンスは、ディフェンスという言葉から派生したことからもわかるように、守りの基本形だ。
子供が誘拐されるケースのほとんどは、子供がだまされて、自分からついていく。しかし、海外の公園なら、犯罪者が子供専用のスペースに入るだけで、子供も周囲の大人も警戒するので、だまして連れ出すことは難しい。
さらに、ベンチを置く場合は、フェンスの外側に、外向きに置く。こうすることで、犯罪者が、遊具のそばのベンチに座りながら、親しげに子供に話しかけ、だまして連れ去る手口を防げる。また、遊具を背にしたベンチなら、遠くから子供を物色している犯罪者に、いち早く気づける。
犯罪が起きやすいトイレの防犯対策も徹底している。男性の犯罪者が女児を個室に連れ込むのを防ぐため、海外では、男性用トイレと女性用トイレをかなり離すことが多い。
男女の入り口が建物の表側と裏側にあったり、通路を挟んで反対側にあることも珍しくない。
物理的に近接していても、視覚的に男女の区分が明確であれば紛れ込みにくい。「うっかり入ってしまった」と言い訳できないからだ。日本に多い男女共用のトイレは「犯罪の温床」と海外では認識されているという。
どうやら海外と比べて、日本の防犯対策は遅れているようだ。安全と危険のポイントをしっかり理解したうえで子供たちに伝え、子供の「景色解読力」を高めたい。
※女性セブン2017年8月10日号