歴史の教科書に出てくる人は、現役を引退した後はどうしていたのか。大政奉還を決断し、江戸幕府最後の将軍となった徳川慶喜(1837~1913)の名が載っていない歴史教科書はないが、「将軍でなくなった慶喜」がどんな生活をしていたかについては、ほとんど知られていない。
歴史研究家の井手窪剛氏が解説する。
「大政奉還をしたのは29歳のとき。その後は表舞台から完全に退いて、77歳で亡くなるまで駿河で悠々自適の生活を送りました。明治政府とも旧幕臣とも交流することもなく、趣味のハンティングなどに没頭し、中でも同人誌に自らの写真を投稿するほど、カメラにのめりこみました。
外出するときには行列を組み、その豪勢さに見物客もいたほど。お気楽に見えるかもしれませんが、表舞台から身を退いて道楽に生きる姿を世間に見せることで、自らの存在が政争の元にならないようにする目的があったと考えられています」
※週刊ポスト2017年8月11日号