戦後70年を過ぎ、戦争の記憶はますます遠ざかるが、かつて「撃墜王」と呼ばれた戦争英雄が、日本にはまだいる。元日本軍エースパイロットたちの証言を集めた戦記ノンフィクション『撃墜王は生きている!』(井上和彦著、小学館文庫)のなかで、戦争英雄をめぐる日本と外国の価値観の違いを、井上氏はこう綴っている。
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筆者はこれまで何度も東南アジア諸国へ渡り、日本軍の足跡を追い続けてきたが、多くのアジアの人々は、当時、日本軍を大歓迎した。とりわけ欧米列強の植民地支配に苦しめられてきた東南アジアの人々は、宗主国の軍隊を次々に打ち倒していく日本軍の姿に拍手喝采したというのが現実である。
平成12年10月25日、フィリピンのパンパンガ州マバラカットとタルラック州のバンバンで、神風特別攻撃隊を慰霊するという、日本人の度肝を抜く式典が開かれた。
関行男大尉率いる「敷島隊」の「零戦」5機が250キロ爆弾を抱いてマバラカット飛行場を飛び立ち、レイテ湾の米空母部隊への体当たり攻撃で大打撃を与えたのが昭和19年10月25日で、その日を記念した慰霊祭だったのである。
日本の慰霊団とともに現地を訪れた筆者は、参列している地元の女子高生に、神風特攻隊をどう思うか聞いてみた。すると彼女らは声を揃えた。「Brave!(勇敢だ)」。私はもう一度聞いた。
「君たちは、カミカゼのパイロットを尊敬しているのですね」