相撲ブームが沸騰している。「謎のスー女」こと尾崎しのぶ氏が、現在相撲コラムを週刊ポストで執筆中。今回は、大きな話題となっている将棋の藤井聡太四段と、相撲界の期待の星・貴景勝について尾崎氏が綴る。
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七月十二日、名古屋場所四日目。かわいらしい少年がテレビに映し出された。お弁当を頬張っているその人は、将棋界最多の二十九連勝を達成した最年少棋士、藤井聡太四段だった。前日大阪で行われた対局に勝利しベスト8入りした、と新聞で読んだばかりだったから、今日はお休みなのか、と見つめる。
たのしげにうなずく笑顔は、藤井四段の将棋での活躍を報じるニュースとは大違い。私は「そうだよね、まだ十四歳だもんね」とほほえんでしまう。
なんでも藤井四段は、小学校の卒業アルバムに「将棋界の横綱になりたい」と書いたほどの相撲好きであるという。幕内の取組一番ずつに、かたわらにいる師匠・杉本昌隆七段と身振りを交えながら熱く語り合っている。私は将棋のことはまったく知らないのだが、藤井四段は時の人。とてもすごい人。そんな藤井四段と同じことに深い興味を私も持っている。相撲が大好きということにおいて仲間なのだと思えて、うれしくなってしまう。
前日までの三日間で、すでに鶴竜は一敗、稀勢の里と日馬富士は二敗している。ボロボロの横綱、大関陣で唯一黒星がない白鵬の相撲は、この日も、いや、この日は、と言ったほうが正しいかもしれない特別な、少なくとも私が相撲を見始めてから初めての、妙なものであった。