芸能

津川雅彦 「過去も未来も『今』この場を楽しむためにある」

俳優・津川雅彦が「今」を語る

 映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、デビュー作『狂った果実』が長らく代表作だった俳優・津川雅彦が、58歳にして次の代表作とめぐりあえたことについて語った言葉を紹介する。

 * * *
 津川雅彦は1998年の映画『プライド 運命の瞬間』で主人公の東條英機を演じている。

「似せるつもりはなかったんだ。真似るってのは下品な手段だからね。役の魂を演じるのが真っ当なやり方だと思ってる。でも努力の証として、やれることはやっておこうと、ご本人に近いメイクをしてみたら、自分でも驚くくらい似ちゃったんだね。

 この映画はいきなり東條英機の演説から始まる。ニュース映像とかでそのしゃべり方も姿もみんなが知ってたからね。似せておかないと観客には、津川雅彦の印象の方が強くなってしまう。普通は、主役が登場する前に、これは東條英機の映画だと充分印象を強めておくもんだが、今回の『プライド』はその手助けが全くない。シャレじゃないけど、いきなり東條の登場だから、顔も仕草も似せて『この人は東條英機だ』と印象付ける必要があった。

 おかげでこの映画は五十八歳にして巡り合えた四十二年振りの代表作とすることができた。それまでは十六歳のデビュー作『狂った果実』が代表作だった。主演で、大ヒットして、作品としても評価を受けて、初めて代表作といえるんだよね。

『狂った果実』の主演は石原裕次郎だと思われがちだが、違う。あれは最後に恋人を横取りされた兄を嫉妬のあまり殺す弟の純愛物語さ。観客である若者はそれで爽快な気分になるんだ。だからあれは、弟が主役なのさ。

『狂った果実』は大ヒットしたし、作品もフランスに渡りゴダールやトリュフォーまでが『大いに刺激を受けた』と評価した。それを超えるような作品は、残念ながら、その後はなかった。伊丹作品もヒットはしたし、評価も得たが、主演じゃない。『プライド』は大ヒットになったし、日本アカデミー主演男優賞も取れた。ようやく『狂った果実』を超す代表作に巡り合えたことになる」

関連記事

トピックス

『傷だらけの天使』出演当時を振り返る水谷豊
【放送から50年】水谷豊が語る『傷だらけの天使』 リーゼントにこだわった理由と独特の口調「アニキ~」の原点
週刊ポスト
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
《英国史上最悪のレイプ犯の衝撃》中国人留学生容疑者の素顔と卑劣な犯行手口「アプリで自室に呼び危険な薬を酒に混ぜ…」「“性犯罪 の記念品”を所持」 
NEWSポストセブン
原監督も心配する中居正広(写真は2021年)
「落ち着くことはないでしょ」中居正広氏の実兄が現在の心境を吐露「全く連絡取っていない」「そっとしておくのも優しさ」
NEWSポストセブン
フジテレビの第三者委員会からヒアリングの打診があった石橋貴明
《離婚後も“石橋姓”名乗る鈴木保奈美の沈黙》セクハラ騒動の石橋貴明と“スープも冷めない距離”で生活する元夫婦の関係「何とかなるさっていう人でいたい」
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
〈山口組分裂抗争終結〉「体調が悪かろうが這ってでも来い」直参組長への“異例の招集状” 司忍組長を悩ます「七代目体制」
NEWSポストセブン
休養を発表した中居正広
【独自】「ありえないよ…」中居正広氏の実兄が激白した“性暴力認定”への思い「母親が電話しても連絡が返ってこない」
NEWSポストセブン
筑波大学の入学式に出席された悠仁さま(時事通信フォト)
「うなぎパイ渡せた!」悠仁さまに筑波大の学生らが“地元銘菓を渡すブーム”…実際に手渡された食品はどうなる
NEWSポストセブン
新年度も順調に仕事を増やし続けている森香澄
《各方面から引っ張りだこ》森香澄、“あざとかわいい”だけじゃない「実はすごいアナウンス力」、「SNSの使い方はピカイチ」
NEWSポストセブン
4月7日、天皇皇后両陛下は硫黄島へと出発された(撮影/JMPA)
雅子さま、大阪・沖縄・広島・長崎・モンゴルへのご公務で多忙な日々が続く 重大な懸念事項は、硫黄島訪問の強行日程の影響
女性セブン
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された(左/時事通信フォト)
広末涼子の父親「話すことはありません…」 ふるさと・高知の地元住民からも落胆の声「朝ドラ『あんぱん』に水を差された」
NEWSポストセブン
SNSで出回る“セルフレジに硬貨を大量投入”動画(写真/イメージマート)
《コンビニ・イオン・スシローなどで撮影》セルフレジに“硬貨を大量投入”動画がSNSで出回る 悪ふざけなら「偽計業務妨害罪に該当する可能性がある」と弁護士が指摘 
NEWSポストセブン
都内にある広末涼子容疑者の自宅に、静岡県警の家宅捜査が入った
《ガサ入れでミカン箱大の押収品》広末涼子の同乗マネが重傷で捜索令状は「危険運転致傷」容疑…「懲役12年以下」の重い罰則も 広末は事故前に“多くの処方薬を服用”と発信
NEWSポストセブン