教科書に出てくるような歴史上の偉人たちは、「現役時代」に華やかな活躍をしているのが一般的だ。だが、なかには「歴史に残る偉業を“定年後”に成した」珍しいタイプの偉人もいる。
江戸時代の測量家で、日本中を旅して『大日本沿海輿地全図』を作った伊能忠敬(1745~1818)だ。実は、その業績は“現役時代”のものではなく、天文学や測量学を勉強し始めたのは隠居後の51歳からだったというから驚きである。歴史研究家の井手窪剛氏が解説する。
「忠敬はもともと豪商の入婿で、傾きかけた家業を立て直した後、実地測量による日本全図の作成に取りかかったのは56歳からでした。当時の日本人の平均寿命は40歳前後と言われる中、忠敬は足かけ18年、測量を続けました。地図は死後、弟子たちによって完成されました。“歴史に輝く老後”というべきでしょう」
※週刊ポスト2017年8月11日号