今年7月、開発に成功したと北朝鮮が報道した『大陸間弾道ミサイル』。そもそも、弾道ミサイルとは一体どんなものなのか。北朝鮮の軍事兵器に詳しい軍事評論家の岡部いさくさんに話を聞いた。
「ミサイルには『弾道ミサイル』と『巡航ミサイル』の2種類があります。前者は曲線を描いて飛び、後者は飛行機のように水平飛行するものです。北朝鮮が発射しているのは『弾道ミサイル』で、これは打ち上げると最初の数分間で加速、その後は大気圏外を飛行し、再び大気圏に再突入してから地上に落ちます」
弾道ミサイルは飛距離によって、「短距離」(500km)、「準中距離」(500~3000km)、「中距離」(3000~5500km)、「長距離」(5500km~)の4種類に分けられるが、7月28日に発射された『火星14号』の射程距離は約1万kmともいわれ、アメリカ全土に届くという。
「しかし、まだこれはテスト段階。実戦で使えるものではありません。防衛省によると、『火星14号』は真上に向けて打ち上げる“ロフテッド軌道”(通常よりも角度を上げて高く打ち上げる発射法)という方法で発射された可能性が高いとされています。つまり、ミサイルは真っ直ぐ上に高く飛んだだけ。太平洋を越えて、大陸間を横断したわけではなく、実際にはまだアメリカには届いていないのです」(岡部さん)
弾道ミサイルが大気圏突入時に受ける熱は、約7000℃にもなるといわれている。そのため、大気圏突入時に燃え尽きることなく、再突入できるミサイルを作るのは、技術的に非常に難しい。
また、通常の軌道で大気圏に再突入できるとされる角度は約6度といわれる。これがコンマ数ミリずれただけでも外にはじかれ、宇宙の藻屑となってしまう。
「北朝鮮は、実際に水平方向に発射実験をしたわけではないので、大気圏に再突入できる技術をまだ開発できていないとアメリカは見ています」(伊藤さん)
現在、北朝鮮が開発に成功し、実戦で使用できるミサイルは全部で主に3種類。1970年代の旧ソ連の技術を基に開発したとされる『スカッド』、その精度を上げ、飛距離を伸ばした『スカッドER』、スカッドERのエンジンを大型に改良した『ノドン』だ。
その他はまだテスト段階とされており、米軍基地のあるグアムを射程距離に狙う『ムスダン』、固体燃料を使用した『北極星』、そして最近頻繁に打ち上げられている『火星』シリーズなどがある。
北朝鮮は、旧ソ連軍が使用していた旧型ミサイルの技術を得て、独自で改良を重ね、なんとかここまでやってきた。戦車や戦闘機のグレードアップを後回しにしてまでアメリカを攻撃するためのミサイル1本に全力を注いできたのだ。
だが一方で、アメリカやロシアはさらに破壊力の強い、より優れた最新式ミサイルをすでにたくさん保有している。
※女性セブン2017年8月17日号