日本人の死因1位であるがん。治療の有力な選択肢である「抗がん剤」だが、高齢者への効果には疑問符がつく。
今年4月、国立がん研究センターは「75歳を超えたら抗がん剤治療に延命効果はない」との研究成果を発表した。
同センターが70歳以上の進行がん患者約1500人を調べたところ、74歳以下では生存期間が延びるなどの治療効果が認められた一方で、75歳以上では生存率に大きな差がなかったのだ。
体力の衰えた高齢者の場合、強い抗がん剤は効果より副作用のほうが大きくなりやすい。胃がんの化学療法で最もよく使用される経口抗がん剤「TS-1」は、長期で服用すると吐き気や嘔吐などの副作用をもたらす。とくに免疫機能の弱まった高齢者は粘膜障害や口内炎など、軽微と思われる副作用でも重症化する怖れがあるので気をつけたい。
最近の研究では、進行・再発の大腸がんに適用される分子標的薬「ベバシズマブ」は、抗がん剤などの化学療法と組み合わせると患者の死亡リスクが高まると指摘されている。
※週刊ポスト2017年8月18・25日号