病の原因を直接取り除く「手術」は医療における最も基本的な治療方法であり、その「効果」も立証されている。
千葉県がんセンター研究所がん予防センターの公表している「全がん協生存率調査」によれば、大腸、胃、前立腺、咽頭、肺など主ながんで手術の有無による60代患者の5年生存率を比較するとほとんどの場合「手術あり」が上回っている。
放射線治療の進歩、抗がん剤の開発が進んでいるとはいえ、「切れる」のであれば、外科手術は依然、医師にとって第一の選択肢といえる。
しかしこのデータは「あくまでがんを治すことを目的とした場合の判断材料であって、健康に生きられるかどうかの判断材料とはいえない」というのは、『不要なクスリ 無用な手術』の著者で、医師・ジャーナリストの富家孝氏である。
「手術は執刀医の技術に左右されることが多いものの、がんの発症部位によって効果の高い手術、低い手術があるというのはわかってきている。
手術はがんを除去できる半面、正常な部分にも損傷を与えるリスクが常につきまとう。手術の有無で大きく生存率が変わらないがんなら、65歳以上の高齢者にとって“あえて切らないこと”も選択肢です。残りの人生のQOL(生活の質)を考えればなおさらです」
※週刊ポスト2017年8月18・25日号