病の原因を直接取り除く「手術」は医療における最も基本的な治療方法であり、その「効果」は立証されている。
がん治療でも、放射線治療の進歩、抗がん剤の開発が進んでいるとはいえ、「切れる」のであれば、外科手術は依然、医師にとって第一の選択肢といえる。しかし、高齢者の場合、がんの発症部位によって効果の高い手術、低い手術があることがわかってきている。
とくに「受けてはいけない手術」となる可能性が高いのはどこか。
◆前立腺がん・喉頭がん
千葉県がんセンター研究所がん予防センターの公表している「全がん協生存率調査」によれば、初期の前立腺がんや喉頭がんでは手術の有無による5年生存率の差がほとんど見られない。
前立腺がんステージIでは手術ありが4.8%だけ上回るが、ステージIIではどちらも100%で同率。喉頭がんのステージIは3.4%差、ステージIIでは逆に「手術なし」が0.9%上回っている。『不要なクスリ 無用な手術』の著者で、医師・ジャーナリストの富家孝氏は、そのデータを踏まえてこう指摘する。
「前立腺がんの手術は排尿障害や勃起障害を起こしてしまう可能性もある。転移がなければほとんどの場合は進行が遅く、70歳以上はもちろん60代後半なら切除しなくていいという意見は医学界でも多い。QOL(生活の質)を重視するなら、放射線治療や抗がん剤、ホルモン療法などを検討すべきです」
甲状腺がんも他のがんに比べ進行が遅く「高齢者なら寿命が先に来る場合も多い」(同前)という。
手術ありの生存率と手術なしの生存率を比較して、「手術あり」が上回るがんであっても、手術以外の選択肢を考慮すべき場合もある。