2015年の相続税法の改正で課税対象が財産総額6000万円以上から3600万円に引き下げられたことで、アパート経営など「相続税対策になる」という謳い文句の“節税術”に注目が集まっている。
近年、話題となったのがタワーマンションの高層階を購入する「タワマン節税」だ。タワマンでは、高層階と低層階で実勢価格が大きく異なるが、相続税の評価額は高層でも低層でも同じになることを利用した方法である。たとえば、高層階の3億円のマンションを購入しても、低層階と同じ5000万円という資産評価額になり、相続税を一気に減らせるという理屈だった。
ところが、この節税法を問題視したためか、2017年度の税制改正で中間層の評価額を基準とし、1階上がるごとに約0.26%増額、1階下がるごとに約0.26%減額する制度になった。『やってはいけない相続対策』(小学館新書)の著者で、元国税調査官の大村大次郎氏が指摘する。
「これによって、たとえば1階と40階であれば評価額に約10%の差ができるようになった。もちろん、それでも実勢価格の違いより評価額の違いのほうが小さい場合が多いので、理屈の上では、まだタワマンの高層階購入は相続税対策になる。
ただし、ここにも落とし穴がある。たとえば、明らかに節税目的のマンション購入(租税回避措置)だと国税が判断した場合などは、実勢価格ベースで課税されることがある。要は税務当局による裁量の余地が残されていて、国税にNGを突きつけられるリスクから逃れられない節税法なのです」
後からルールを変えるのは徴税者の常套手段。買ってしまってからではもう遅いのである。
※週刊ポスト2017年8月18・25日号