人気の芸能人が多数出演する「水泳大会」が放送されたのは1970年8月11日、『紅白スター対抗水泳大会』(フジテレビ系)が最初だった。司会はてんぷくトリオ、出場者はクール・ファイブ、中尾ミエ、ヒデとロザンナ、美川憲一、千昌夫などの人気歌手。その後、各局がこぞって放送を開始するようになる。
フォーリーブス時代は選手として参加し、1980年代は司会を務めた、おりも政夫が振り返る。
「当時、運動会や野球大会など芸能人が出場するスポーツ番組がたくさんあり、その一環として生まれました。五木ひろしさんや八代亜紀さんなどの演歌歌手も水着になっていましたよ」
当初は年齢やジャンルを問わず人気歌手が出場していたが、1971年デビューの南沙織や中3トリオと呼ばれた山口百恵、桜田淳子、森昌子などのアイドル歌手が人気を集めるようになると、水泳大会でも必然的に彼女たちが中心になっていった。『アイドル進化論』の著者である社会学者の太田省一氏が話す。
「水着で動くアイドルの姿は本当に貴重でした。今ではイメージビデオで見られますが、1978年の段階でビデオの普及率は1.3%で、ビデオソフト自体もほぼ発売されていませんでしたから。恥ずかしそうな佇まいに色気を感じたものです」
榊原郁恵や河合奈保子、柏原芳恵はグラマラスな体型で、石川秀美は美脚で注目を集めた。
「プロポーションの良さに初めて気付くこともあれば、意外と運動神経がいいとわかることもありました。歌番組では決して見られないアイドルの一面を知ることができたんです」(太田氏)