有名な歴史上の人物を取り上げることが多いNHK大河ドラマ。各作品は歴史をベースにしたフィクションだが、そこで描かれた場面を、ついつい「本当にあったこと」と思いがちだ。あの名場面は史実なのか。
●『独眼竜政宗』(1987年放送、主演・渡辺謙)
歴代最高となる平均視聴率39.7%を記録した同作。
脚本を担当したジェームス三木氏は、執筆前に大量の史料を読み込んだという。
「読んでいると、政宗自身の“劣等感と自尊心”を描きたいと思うようになったんです。だいたい大河ドラマは主人公をいい人に描くけど、そうは描きたくなかった。100%の善人も100%の悪人もいない。政宗も例外ではありません」
結果、大河の主人公らしからぬ荒々しい人間性の政宗が描かれた。それは三木氏が歴史と向き合った成果だが、そもそも政宗のトレードマークである「眼帯」は後年に創作された姿だという。伊達政宗歴史館館長の佐藤久一郎氏がいう。
「政宗公が実際に眼帯をつけていたという記述はどこにもありません。描かれた像も、両目が開いたものが多い。片目を失ったのは史実とされていますが、遺言に“自分の絵を描く時は普通に目を開けてくれ”とあったようです。ただし、政宗公の妻・愛(めご)姫が政宗の死後に作らせ、瑞巌寺に奉納した木製の座像は、半眼というか、右目を少し閉じている。おそらくこの像が最も本人の姿に近いのでは」
政宗が眼帯を付けて描かれるのは、佐藤氏が知る限り1942年の映画『獨眼龍政宗』が最初だという。
※週刊ポスト2017年8月18・25日号