歴史上の人物の中でも、繰り返し映画やドラマに描かれる人気者に織田信長と豊臣秀吉がいる。NHK大河ドラマでも、繰り返し描かれている。多彩なキャストの名演、怪演に、ついつい本当にあったことと思いがちだ。どこまでが史実で、どこからがフィクションなのだろうか。
●『信長 KING OF ZIPANGU』(1992年放送、主演・緒形直人)
明智光秀(マイケル富岡)の謀叛を知った信長(緒形)は、自ら弓を取り、次々に相手を射倒していく。矢が尽きると薙刀に持ち替えて戦い、森蘭丸(石野太呂字)も雄々しく応戦する。
本能寺の変に関して信頼性の高い史料である『信長公記』には、信長は初め弓で戦い、その後は槍で戦ったとある。ただし蘭丸が一緒に戦った記述はない。
信長はとかくドラマでは“派手”になりがちで『功名が辻』(2006年放送、主演・仲間由紀恵)では、舘ひろし演じる信長が本能寺で鉄砲を持って奮戦。歴史作家の井手窪剛氏によると「銃を撃つ信長はドラマ上の演出」である。
●『秀吉』(1996年放送、主演・竹中直人)
〈雪の降るなか、信長(渡哲也)が現われる。さっと草履を揃える秀吉(竹中)。「草履がぬるい、尻に敷いたか」と信長に蹴りつけられた秀吉が答える。「抱いておりました」〉
誰もが知る“猿”と呼ばれていた頃の秀吉と信長の出会いのシーンだが、「このエピソードは江戸中期以降の『絵本太閤記』が初出で、信憑性は極めて低い」(前出・井手窪氏)というのが定説だ。
※週刊ポスト2017年8月18・25日号