国際情報

金正恩が核兵器と弾道ミサイルの開発を止めることはない理由

北の核兵器の威力はこの10年で10倍になったとの推定も

 北朝鮮がグアム島周辺に弾道ミサイルの発射を計画していることで、アメリカと一触即発の緊迫状態が続いている。グアム当局は核兵器による攻撃も想定した緊急ガイドラインを発表するなど、いまや北朝鮮の核保有は現実的な脅威として受け止められている。

 北朝鮮の核開発の進捗状況や威力、日本への影響などどれほど深刻なのか。『北朝鮮恐るべき特殊機関』などの著書がある朝鮮半島問題研究家の宮田敦司氏がレポートする。

 * * *
 韓国国防省は7月5日、北朝鮮北東部の豊渓里(プンゲリ)の核実験場の状況について、「2番、3番坑道はいつでも核実験が可能な状態を維持している」「爆発力を拡大させた核実験で、核弾頭の能力を試す可能性がある」と明らかにしている。

 北朝鮮は昨年の9月9日の建国記念日に5回目の核実験を実施していることから、今年の建国記念日に6回目の核実験を行う可能性もある。

 北朝鮮は核実験の回数を重ねるたびに核爆発の威力を高めてきた。2006年10月の初回は1キロトン未満と推定されたが、2016年9月の5回目は広島や長崎に投下された原爆と同程度の最大20キロトンと推定されている。

 米ジョンズ・ホプキンズ大の北朝鮮分析サイト「38ノース」は2017年3月10日、核実験場で坑道の掘削が続いており、地形などから昨年9月に実施された5回目の10倍以上の威力を持つ核実験も可能で、6回目の核実験を行う場合、最大282キロトン規模になる可能性があるとの分析を発表している。

◆北朝鮮の核実験の危険性

 北朝鮮はこれまで全ての地下核実験を豊渓里(プンゲリ)で行っているが、このような狭い地域における地下核実験には大きな危険が伴う。地下核実験では実験の規模にもよるが、通常、地下核実験では一辺が50~60kmの砂漠で行われる。その理由は、核爆発によって破壊された地下水脈を通じて放射能が拡散することを防ぐためだ。

 米国はネバダ砂漠、中国はタクラマカン砂漠、インドはタール砂漠、パキスタンはシン砂漠、旧ソ連は砂漠がないため広大な平原で地下核実験を行っている。ネバダ砂漠の核実験場は日本の鳥取県全域に相当し、旧ソ連・カザフスタンのセミパラチンスク核実験場の面積は四国とほぼ同じである。つまり地下核実験は砂漠などの広大な場所が必要になるのだ。

 そのため、北朝鮮は過去に、金日成政権が旧ソ連・ブレジネフ時代(1964~1982年)の末期に旧ソ連共産党指導部に対し「核兵器を開発したあかつきには、その実験場としてソ連の地下核実験場を使用させてほしい」と非公式に要請したことがある。(「産経新聞」1993年3月20日)

 金日成政権がブレジネフ政権に場所借りの要請をした時期は、1970年代末から1980年代初めで、希望した実験場はセミパラチンスクの可能性がある。

 ブレジネフ政権が当時、北朝鮮の核実験場使用の申し入れにどう対応したかは明らかになっていない。しかし、このような北朝鮮の動きは、北朝鮮には核実験に適した場所がないことを北朝鮮(金日成)が認識していたことを示している。

 豊渓里周辺は岩盤となっているため安全という見解があるが、度重なる実験により岩盤に亀裂ができている可能性もある。朝鮮半島は豊かな地下水脈が流れており、最終的に少量の放射性物質が日本海へ流出しないという保証はどこにもない。

関連記事

トピックス

優勝パレードには真美子さんも参加(時事通信フォト/共同通信社)
《頬を寄せ合い密着ツーショット》大谷翔平と真美子さんの“公開イチャイチャ”に「癒やされるわ~」ときめくファン、スキンシップで「意味がわからない」と驚かせた過去も
NEWSポストセブン
デート動画が話題になったドジャース・山本由伸とモデルの丹波仁希(TikTokより)
《熱愛説のモデル・Nikiは「日本に全然帰ってこない…」》山本由伸が購入していた“31億円の広すぎる豪邸”、「私はニッキー!」インスタでは「海外での水着姿」を度々披露
NEWSポストセブン
生きた状態の男性にガソリンをかけて火をつけ殺害したアンソニー・ボイド(写真/支援者提供)
《生きている男性に火をつけ殺害》“人道的な”窒素吸入マスクで死刑執行も「激しく喘ぐような呼吸が15分続き…」、アメリカでは「現代のリンチ」と批判の声【米アラバマ州】
NEWSポストセブン
“アンチ”岩田さんが語る「大谷選手の最大の魅力」とは(Xより)
《“大谷翔平アンチ”が振り返る今シーズン》「日本人投手には贔屓しろよ!と…」“HR数×1kmマラソン”岩田ゆうたさん、合計2113km走覇で決断した「とんでもない新ルール」
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の学生時代
《被害者夫と容疑者の同級生を取材》「色恋なんてする雰囲気じゃ…」“名古屋・26年前の主婦殺人事件”の既婚者子持ち・安福久美子容疑者の不可解な動機とは
NEWSポストセブン
ソウル五輪・シンクロナイズドスイミング(現アーティスティックスイミング=AS)銅メダリストの小谷実可子
《顔出し解禁の愛娘は人気ドラマ出演女優》59歳の小谷実可子が見せた白水着の筋肉美、「生涯現役」の元メダリストが描く親子の夢
NEWSポストセブン
ドラマ『金田一少年の事件簿』などで活躍した古尾谷雅人さん(享年45)
「なんでアイドルと共演しなきゃいけないんだ」『金田一少年の事件簿』で存在感の俳優・古尾谷雅人さん、役者の長男が明かした亡き父の素顔「酔うと荒れるように…」
NEWSポストセブン
マイキー・マディソン(26)(時事通信フォト)
「スタイリストはクビにならないの?」米女優マイキー・マディソン(26)の“ほぼ裸ドレス”が物議…背景に“ボディ・ポジティブ”な考え方
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
《かつてのクマとはまったく違う…》「アーバン熊」は肉食に進化した“新世代の熊”、「狩りが苦手で主食は木の実や樹木」な熊を変えた「熊撃ち禁止令」とは
NEWSポストセブン
アルジェリア人のダビア・ベンキレッド被告(TikTokより)
「少女の顔を無理やり股に引き寄せて…」「遺体は旅行用トランクで運び出した」12歳少女を殺害したアルジェリア人女性(27)が終身刑、3年間の事件に涙の決着【仏・女性犯罪者で初の判決】
NEWSポストセブン
ガールズメッセ2025」に出席された佳子さま(時事通信フォト)
佳子さまの「清楚すぎる水玉ワンピース」から見える“紀子さまとの絆”  ロングワンピースもVネックの半袖タイプもドット柄で「よく似合う」の声続々
週刊ポスト
永野芽郁の近影が目撃された(2025年10月)
《プラダのデニムパンツでお揃いコーデ》「男性のほうがウマが合う」永野芽郁が和風パスタ店でじゃれあった“イケメン元マネージャー”と深い信頼関係を築いたワケ
NEWSポストセブン