SNSにアップして「いいね!」をたくさん獲得するための「リア充代行業者」に全国から依頼が多数寄せられているという。サプライズ誕生日パーティをリア充代行業者に依頼し、その様子を公開すると通常の50倍以上の「いいね!」が付いたなど、その効果は確かなようだ。
40代の浅井真由美さん(仮名)は、「お酒を飲める同世代の女性」を代行業者に依頼した。同い年のスタッフと合流した浅井さんは、よくひとり酒をするという居酒屋で1980~1990年代のあるある話をして盛り上がり、2次会ではカラオケでアルフィーを熱唱。その様子をインスタグラムに投稿し、多くの「いいね!」を集めた。
こうしたスタッフを派遣する「ファミリーロマンス」の石井裕一社長はこう話す。
「この女性は昨年離婚したばかりで、生活がとても寂しかったそうです。同年代の女性は仕事や子育てに忙しいし、勤務先は若い女性ばかりで話が合わず、同世代の女性と話がしたかったとか。中高年の依頼者には、根底に孤独感を抱えているかたも目立ちます」
他に依頼が多いのは、高級料理店でのママ友ランチ会風景を撮影したいという主婦。息子の結婚式の参列者を依頼する母親までいるという。友達が少ない息子のために、架空の友達を依頼し、息子が多くの友達に囲まれている様子を写真に収めたいという。
ランチ会の写真をSNSに投稿するために、リア充代行業者をよく利用するという不動産会社に勤める独身の久保未華子さん(仮名・46才)はこう話す。
「同世代の友達は、結婚し、子供も産んで、SNSには運動会や家族旅行の写真を頻繁に投稿しています。悪気がないのは百も承知ですが、独身の私はそういった写真を見るたびに追いつめられるような気持ちになる。私には自慢できるものが何もないって…。
自分も幸せで華やかな人生を歩んでいるところを誰かに見せたいという思いで、リア充代行業者を利用してみたんです。不思議とリア充写真を投稿し続けることで、他人の幸せそうな写真を見ても、不安にならなくなったんです」
そこには中高年ならではの心情があると指摘するのは博報堂若者生活研究室の原田曜平さんだ。
「今の中高年は、さまざまな生き方を選択してきた世代。同じ境遇の友達が減り、孤独を感じやすい。一般に人が人生に感じる満足度は年齢が上がるほど下がります。寂しくて満足できない現実があるから、中高年はリア充を求めるのかもしれません」
関西学院大学社会学部准教授の鈴木謙介さんは、「今後、ますますリア充を求める中高年が増える」と予測する。
「仕事や子育てが終わって老後のセカンドライフを見据えた時、趣味もなく友達もいなければしんどくなります。長い余生を楽しんで生きようと思うほど、人はリア充を求めざるを得ない。今は中高年こそ“もっとリア充にならなきゃ”と思う時代なんです」
人生100年時代、年を重ねるほど趣味と友達が必要だ。それはSNSが全盛でも変わらないことなのだろう。
※女性セブン2017年8月24・31日号