おふたりとも実に元気だ。よく笑い、時々怒り、よく話す。ともにひとりで生活をしている。作家・佐藤愛子さんはエッセイ集『九十歳。何がめでたい』が93万部を突破し、2017年上半期ベストセラーランキング総合第1位に。女優・冨士眞奈美さんは『やすらぎの郷』(テレビ朝日系)で演じたアメリカ帰りの元女優役が話題を呼んだばかりだ。
実はこの2人、旧知の仲。そんな2人の歯に衣着せぬおもしろ対談が実現。元気の秘訣はどこにあるのか? なんともめでたい対談のはじまり、はじまり。
冨士:健康に関していうと、2~3年前に左の耳が突発性難聴になって聞こえなくなって。不便といえば不便です。
佐藤:右耳は聞こえるの?
冨士:右耳は何ともないんです。
佐藤:じゃあ、テレビを見ていて、みんながわーっと笑うと、なんで笑ってるかはわかるわけでしょう。
冨士:そのぐらいはわかりますよ。
佐藤:私なんか、なんで笑ってるのかわからないのよ。あなたのような女優さんは、口跡がいいからこうしてスムーズに話ができるの。若い女の子なんか、さらさら、さらさら、川のせせらぎにしか聞こえない。男の人も、この頃の若い人は声が小さくなりましたね。
冨士:ほんとにささやいてるみたい。
佐藤:あれは何なんだろう。自信がないのかな。
冨士:エネルギーがないのかな。「はあ?」って、もっと大きな声で話してって言うんですけど。
佐藤:何かしら弱ってる。で、年寄りになると声が大きいのよ(笑い)。
冨士:聞こえないから。それでまたうるさいって叱られるんだわ。先生は娘さんに叱られることあります?
佐藤:「この前、言ってたじゃないの」みたいなのは、叱られるうちに入るのかしら?
冨士:それは入りませんよ(笑い)。こないだ、娘に俳句で言い返してやったんです。「刺すように もの言う娘 鳳仙花」。それを聞いてニヤッとしても、優しくはならない。
佐藤:じゃあ、冨士さんは我慢するタイプですか?
冨士:結構、そうですね。時々、溜めて溜めて、溜め込んで爆発すると、娘は5、6歩後ずさりする(笑い)。
佐藤:そんなふうに見えないのにね。私も“怒りの佐藤”なんて言われるけど、昔に比べると怒らないですよ。
冨士:でも、先生は書いていらっしゃるから、筆先から怒りが出ていっちゃうからいいんですよ。
佐藤:そうね、発散してるわね。
冨士:私の場合、面倒くさいの。これを言ったら、こう返ってくるのが。がんで死んだ私の長姉の最期の言葉が「面倒くさい」でした。
佐藤:ああ、それはわかるわね。今、どこも悪くなくても、そう思うことがあるもの。私はもうご飯を食べるのも面倒くさいの。