ネットゲームへの依存は中国では大きな社会問題となっている。現地の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏が指摘する。
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中国社会はもう長い間、ネットゲーム中毒への対策に苦しめられ続けてきた。地方の都市に行けば、駅前に喫茶店はなくともネットカフェがあり、そこではブルーライトに照らされ、一日中ゲームに明け暮れる中高生がいて、そうした子供を家に連れ戻しに来る両親との諍いが絶えないのだ。
だが、ネットゲームで身を亡ぼすのは、実は子供よりも大人のケースほど深刻である。
6月2日付『杭州交通918』の記事、〈ネットカフェで遊ぶため、カフェのオーナーの子供を産み、その子供を3年間以上病院に放置して逮捕された女〉は、そうした問題がいまだ社会に重く横たわっていることを世に知らしめることとなった。
問題の女性は高文という上海に住む37歳の女性である。
記事のタイトルにあるような理由からネットカフェのオーナーと関係を持ち、その後、2014年2月19日、中絶手術が怖いという理由から最終的に娘を産み落とした。出産後は娘が重い病気を抱えていたことを理由に病院に預けたまま、自身はネットカフェに入り浸ったというのだ。
娘の病状が回復した後には、上海市子供臨時看護センターへと移されたものの、その後3年間、一度として高が娘の見舞いに訪れること貸せなかったため、ついに警察に通報され、公安が間に入ることとなったという。だが、公安が彼女を訪れても問題は簡単には解決しなかった。高が娘の養育を拒否したからである。
2015年2月9日にはとうとう処罰の対象となるとの警告が発せられるが、それでも高は養育の意思を示さなかった。そして2016年5月12日、上海市子供臨時看護センターが娘を引き取り、今日に至っているという。
なんとも絶望的な話である。