証券会社や銀行の破綻……「絶対にありえない」とされていたことが相次いで起こった1990年代後半。思想史研究家の片山杜秀氏と、元外交官・作家の佐藤優氏が、バブル崩壊後、急速に日本に「貧困」へ向けて助走していた時代を振り返った。
片山:平成史を語る上で欠かせないトピックがIT化です。インターネットが爆発的に普及するきっかけが、1995年11月のWidows 95日本版の発売でした。
佐藤:私がロシアから帰国した1995年当時、外務省では1人1台ノートパソコンを持っていました。
ただし外とインターネットで繋がるパソコンは1台だけ。ワープロソフトはマイクロソフトのWordではなく、国産の一太郎を使っていました。
片山:私たちの仕事で言えば、Windows 95の発売で原稿のやりとりをメールで行うようになりました。私は「近代化」が遅れていたので、1999年頃までなおファックスで送稿していましたが(笑)。Windows95の登場と同時期、携帯電話の小型化も進みました。
佐藤:ポケベルに代わり、値段が安く地下鉄の駅でも電波が通じるPHSが流行しましたね。
片山:高校生はみんなPHSを持っていました。ケータイとネットの普及で、女子高生の売春である援助交際が話題になりました。
援交はあの時代の象徴として語られますが、売春が突然低年齢化したわけではありません。援交も1980年代の夕ぐれ族(愛人バンクの一つ)の延長線上にあるものでしょう。