ジャーナリストの森健氏は7月、韓国・釜山の中高生と対話するために当地を訪れた。「ジャーナリストレポート・釜山の若者との対話」。最終回となる第3回はいよいよ合宿での質疑応答である。
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韓国・釜山にある出版社「インディゴ書院」と釜山広域市の教育局の主催によるカルチャー教育の合宿「ユースキャンプ2017」。
私が呼ばれた講演は7月7~8日と14~15日の2回。キャンプ全体の目標が「希望」だったが、14歳から16歳の中高生が関心を抱けそうな日本への関心事で大きいものはやはり東日本大震災とのことで、「震災と中高生」というテーマになった。
時間はいずれも90分。本来講演では質疑応答は10~15分というケースが一般的だが、今回は50分を質疑応答の対話にあてることにした。
「たしかにそのほうが、子どもたちも興味がもてるかもしれないですね」
市の教育局の課長もそんな案に前向きだった。
だが、始めてみると、その出だしはひっくり返りそうな質問が飛び出した。
誰か質問したい人は手をあげて──。司会のスタッフが声をかけて、手があがったのは5人ぐらいだった。初回の講演は19時スタートで、夕食の後というスケジュール。壇上から200人のほどの14歳を眺めていると、眠たそうな顔も多かった。
そんな中、ホールの真ん中あたりに座っていた男子生徒を指すと、彼は丁寧にお辞儀をし、お話おもしろかったです、と言って、こう続けた。
「ところで、森さんは慰安婦問題をどう考えていますか」
いきなりその問題から来るとは想像していなかった。
会場の生徒もざわざわとなったが、ここで詳細な議論をする余裕もない。そこで、かつて日本の軍隊が心ないことをして、同じ日本人としては申し訳ないと思っているが、早く解決できればと思っている──そう答えると、男子生徒は「わかりました」と、わかったような、わからないような無表情で応じた。
その後数人、被災地の現状や子どもたちのその後について質問があったのち、また、テーマとは異なる質問が寄せられた。今度はメガネをかけた真面目そうな女子生徒だった。
「森さんは、ハシマ問題をどう考えますか」
ハシマ……聞いたことがあるが、何のことだったか。文字が浮かぶのに数秒かかった。
思い出した。端島──軍艦島のことだ。
「あなたの言っているのは、軍艦島の強制徴用の問題?」
尋ねると、女子生徒はうんうんと頷いた。またも政治問題だった。