安倍晋三・首相の“応援団”だった読売新聞や産経新聞がポスト安倍として岸田文雄・自民党政調会長を持ちあげだすなか、安倍首相自身にもこれまでのような自信や、やる気が感じられないといった声も出ている。
安倍首相には、早めに身を退いて“後継指名”の力を残し、岸田政権下での憲法改正の道筋をつけて歴史に名を刻むシナリオもありそうだが、政治アナリスト・伊藤惇夫氏はそれさえ皮算用に終わりかねないと指摘する。
「自民党議員の大勢は総選挙を前に憲法改正の冒険などしたくないというのが本音。そんななかで憲法改正に慎重な岸田氏が、細田派の数がほしいからとタカ派の安倍総理の言いなりに改憲を進めれば党内の反発を買うし、ハト派のイメージにも傷がついて国民の支持も失いかねない。当面は安倍さんを支えながら憲法改正の議論だけして、首相になれば改憲は棚上げとするつもりではないか」
かつて野党の追及に「内閣支持率は53%ある」と誇ってみせた安倍首相は、それに続けて「民進党の支持率はご承知の通り」と、メディアの世論調査での野党支持率の低さをあげつらっていた。そうしたメディアの追い風が向かい風に変わった今、政界の変わり身の早さを痛切に感じているのではないだろうか。
※週刊ポスト2017年9月1日号