戊辰戦争で負けた幕府側を「賊軍」としてパージし、江戸時代を否定するように近代化・西欧化に突き進んだ明治日本。では、もし幕府軍が勝っていたら、近代化はなし得なかったのだろうか。いや、そんなことはないはずだ。あえて、歴史の「if」を考えてみる。前衆議院議員の村上政俊氏が解説する。
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もし戊辰戦争で江戸幕府が勝っていたら、藩が存続し藩校もそのままの形で維持されていただろう。江戸時代の識字率は同時代的には世界最高水準。現在の初等教育にあたる段階の質の高さは寺子屋によるところが大きい。寺子屋の師匠が算盤や習字を教えるのは時代劇でもお馴染みの光景だ。藩校での人材育成も盛んだった(*1)。
【*1/庄内の致道館、会津の日新館、水戸の弘道館など、全国約270の藩校があった。】
特に江戸中期以降は各藩の名君が競うように設立し、その中から藩政改革を担う存在も大いに育った。明治維新後は旧制中学を経て進学校として現存する福岡県立修猷館高校のような例もあるが、多くの藩校は廃れてしまった。もし幕府が勝っていれば、藩校が地方の高等教育の中心になっていただろう。
その結果、日本はもっと多くのノーベル賞を獲得していた可能性が高い。埼玉大学出身の梶田隆章・東大卓越教授が物理学賞を受賞したように研究の裾野は分厚い。藩校という形で県よりも多い数の研究機関が日本にあれば、ノーベル賞も米英に並ぶ受賞数になっていたと考えられる。