高齢社会において、元気で長生きすることはもっとも重要なミッション。“聞こえ”問題もそのひとつだ。難聴は認知症の危険因子であり、うつや交通事故のリスクも高めるといわれる。
高齢者の“聞こえ”との向き合い方を、東京都健康長寿医療センター耳鼻咽喉科医長の高橋正時さんに聞いた。
◆耳垢が溜まっている場合も。ほかの病気がないか確認を
「加齢性難聴の多くは60~70代で始まり、遺伝や生活環境などによる個人差がかなりありますが、80代で80%ほどの人が難聴というデータもあります。
ゆっくり進行するので本人は気づかず、“異常に大きな音でテレビを見ている”などの理由で周囲の人が先に気づくことが多いようです。
加齢性難聴は、耳の奥にある内耳と呼ばれる領域の感覚細胞や神経細胞が消失することが主な原因で、残念ながら治すことはできません」(高橋さん。以下「」同)
ゆっくりとした進行のため、本人が不便を感じにくいことも発見が遅れる理由のひとつだという。独居の場合などは特にそうだろう。
「ただ高齢者にはよくあることですが、自分で耳掃除をすることで逆に耳垢が奥に押しやられて溜まっていること(耳垢栓塞)もあります。耳鼻科で掃除をするだけで、聞こえがよくなることもあります。
また中耳炎により鼓膜に穴が空いたり損傷したりして聞こえが悪い場合もあり、これは治療が可能です。とにかく聞こえが気になったら、耳鼻科の受診をおすすめします」
◆補聴器で聞こえは向上する。大切なのは家族の語りかけ
「補聴器を使って聞こえをよくすると生活の質は大きく改善しますが、聞こえない状態に慣れたところに補聴器を使うと、“よく聞こえる”ことに慣れるまで時間がかかります。
そのため補聴器外来のある耳鼻科で聴力などの検査を行い、補聴器業者の認定補聴器技能者(補聴器専門の資格者)に補聴器選びのアドバイスやフィッティング(調整)をしてもらい、自分に合った補聴器をつけることが大切です」
補聴器は専門店以外でも買えるが、商品だけを見て適当に買ってしまうと耳に合わず、使わなくなってしまうことも多いという。また廉価な集音機は耳を傷めることもある。
「特に大切なのは、本人の意欲です。人と会話したり、音楽を楽しんだり、聞こえることで生活が潤うことを、家族や周囲のかたがたが教えて、応援してあげてほしいですね」
※女性セブン2017年8月24・31日号