香港返還から20年。「1国家2制度」で50年間保障されていたはずの香港の自由は現地に乗り込んだ習近平によって明確に否定された。香港は完全に中国という巨龍に呑み込まれてしまった。現地からジャーナリスト、相馬勝氏がレポートする。
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「習近平は香港から出ていけ」「習近平は1国2制を守れ」「香港は中国の植民地ではないぞ」。
香港の中国返還20周年記念日の7月1日早朝、香港入りした習近平国家主席ら一行が宿泊しているホテルにほど近い修頓公園で、怒号が飛び交った。100人近い警官隊が約20人の民主化運動指導者らを取り囲むや、抗議行動をやめさせようと、彼らを抱え上げて、殴りつけた。
そのなかには、2014年9月から12月まで3か月間にわたって香港島の幹線道路などを占拠した学生主導の「雨傘運動」の指導者、黄之鋒氏らも含まれていた。黄氏は手錠をかけられ、警察署に連行、身柄を一時拘束された。また他のメンバーも同様の措置をとられたが、午前中に釈放された。
筆者は7月1日をはさんで数日間、香港に滞在し、習近平の香港視察をウオッチした。同時に、香港の民主化指導者らと行動をともにして、抗議行動を取材した。民主派と警官隊との衝突や、民主派と親中派の対立による暴力事件が増えてきたことによって香港の雰囲気は年々悪くなっている。