がんの3大療法は「外科手術」「抗がん剤治療」「放射線療法」だが、高齢者にとっては、副作用や手術の肉体的負担など、いずれもハードルが高い。特に抗がん剤治療では、今年4月、国立がん研究センターが「75歳以上の進行がんには効果なし」と報告するなど、高齢者が抗がん剤治療を受ける意義について問われ始めている。
抗がん剤治療を専門に行なう田村和夫・福岡大学医学部教授(腫瘍内科)もその難しさを証言する。
「高齢者は腎機能などが半分程度まで低下していることも珍しくない。それは抗がん剤を処理できる能力も半減していることを意味する。そのため高齢者の抗がん剤治療は、慎重に検討して可能かどうかを判断する必要がある」
それでも抗がん剤治療を提案されるのは、がんの部位によって手術の選択が難しい場合が多い。昨年、ステージIIの食道がんを患った都内在住の男性(79)が話す。
「医師からは『手術もできるが大きく開胸する必要があり、年齢を考えれば抗がん剤と放射線を組み合わせる治療がいいでしょう』と説明された。悩んだ末に後者を選びました」
※週刊ポスト2017年9月1日号