天皇の退位特例法が6月に成立したのを受けて、法務省が恩赦の実施に向けて検討に入った──。8月13日に毎日新聞が、1993年の皇太子と雅子妃の成婚時以来の恩赦が実施される可能性を報じた。「恩赦」は、恩赦法に基づき国家的な祝賀に際して特別に刑罰を減免する制度だ。
「現行憲法下の10回の恩赦のうち、5回は天皇・皇室の慶弔時に行なわれました。今のところ、恩赦があるとはっきり決まったわけではありませんが、今回の生前退位は元号も変わる新天皇の即位という皇室の大きな慶賀行事も伴うもの。前回の恩赦から四半世紀以上経っていることもあり、大規模な恩赦になる可能性は十分考えられます」(皇室ジャーナリストの神田秀一氏)
過去の恩赦では、公職選挙法違反者の公民権回復が多く実施されてきた(1993年は1277件のうち945件)。政界の大物が絡んだものも少なくない。
1956年の国連加盟恩赦では、造船疑獄に絡む佐藤栄作氏(後に首相)の政治資金規正法違反が免訴となり、1968年の明治百年記念恩赦の直前には、公選法違反を最高裁で争っていた佐藤孝行氏(後に自民党総務会長)が上告を取り下げて刑を確定させ、恩赦を受けた。
逆に、1987年にロッキード事件の控訴審で有罪判決を受けて最高裁に上告していた田中角栄氏は恩赦を受け損ねている。政治評論家の小林吉弥氏が解説する。