「魏志倭人伝」にも登場する歴史ある野菜のみょうが。しかし、食用にしているのは世界でも日本だけだ。漢方では消炎や解毒の作用がある生薬として、おもに煎じ薬や外用薬に利用されてきた。
あまりたくさんみょうがを食べるとバカになる…という言い伝えがある。これは釈迦の弟子のひとりで、自分の名前すら忘れるほど物忘れが激しかったスリハンドクの墓に生えていた草(みょうが)に、名前を荷(にな)って死んでいった彼にちなんで「茗荷」と名づけたことに由来するといわれている。
独特の香りとシャキッとした歯触りが身上。香りのもとである精油成分のα-ピネンには胃の消化を助ける働きがある。また、しょうがと同様に体を温める作用も。血行や発汗を促したり、あるいは体温を調整して発熱を抑える効果もある。バカになるどころか、熱中症や夏バテ予防に積極的に摂りたい“賢菜“である。家庭料理研究家の松田美智子さんは、こう話す。
「子供のころから無類のみょうが好きで、私の夏は常にみょうがとともにある…と言ってもよいくらいです(笑い)。さらしみょうがが王道ですが、火を通してももちろんおいしい。豚肉と合わせると格好の夏バテ対策おかずに」
【みょうがの準備】
みょうがは身が締まって艶があり、ずんぐりとして厚みのあるものを選ぶ。先端が開いてつぼみが見えるものは中がスカスカで繊維も硬くなっている。みょうがの香りは繊細で揮発性が高いので、使う寸前に刻むこと。刻んだ後、氷水にさらしてあく抜きを。長時間さらすと香りが飛んでしまうので、さっと済ませること。
■『みょうがと豚肉のミルフィーユ』の作り方
【1】豚バラ肉しゃぶしゃぶ用200gは、両面に塩こしょうする。みょうが4個は縦半分に切り、半月の薄切りにしておく。
【2】直火にかけられる土鍋、またはキャセロールにごま油小さじ1を広げ、4等分した豚肉を長さを考えながら敷く。薄力粉適量を茶こしなどでこしながら薄くふる。
【3】みょうがを3等分して重ね、軽く塩こしょうする。豚肉とみょうがを交互に重ね、最後は豚肉で重ね終える。
【4】酒大さじ2を回しかけ、薄力粉をその上に薄くふり、蓋をする。最初は弱火にし、水分が出始めたら火を強くして、豚肉に火が通ったら出来上がり。
撮影/鍋島徳恭
※女性セブン2017年9月7日号