保守派の大重鎮として知られる西尾幹二氏が、8月18日付の産経新聞で公然と安倍批判を繰り広げたことが話題になるなど、保守論客たちが続々と、安倍首相から離反し始めている。かつて「安倍ブレーン」と呼ばれた国際政治学者の中西輝政氏は、「さらば安倍晋三、もはやこれまで」と題した論考を保守系雑誌『歴史通』(2016年5月号)に寄稿した。2015年8月の「戦後70年談話」と同12月の「日韓慰安婦合意」は、歴史観をめぐる日本の保守陣営の戦いにおいて、「歴史的な大惨事」とし、安倍首相への支持撤回を宣言した。
若手論客からも、安倍支持を撤回する動きが広がりつつある。月刊誌『文藝春秋』9月号に掲載された「若手学者激論 九条加憲案はひどすぎる」で安倍首相への「失望」を表明して話題となったのが、文芸批評家の浜崎洋介氏だった。同鼎談には、国際政治学者の細谷雄一氏と社会学者の西田亮介氏も登場した。浜崎氏は言う。
「第二次安倍政権ができたとき、私はうれしかったんですよ。彼ほど明確に改憲を謳う政治家はほかにいなかったし、このまま憲法改正に向かって突き進んでほしいと期待もしていました。
しかし、靖国神社には2013年に1回行ったきりだし、モヤモヤする疑いの念が次第に出てきた。決定的になったのは、あの加憲案です。戦後レジームからの脱却を謳った安倍首相なのに、あれは戦後レジームを永久に固定化するものです。『憲法を変えた首相』として歴史に名を残したいという、安倍首相の名誉欲に基づいた行動でしかないことに気づいてしまった」
そうして覚悟を決めると、「安倍首相のダメなところがはっきり見えてきた」と語る。
「稲田朋美防衛大臣の辞任劇を見てもわかりますが、人を見る目がなさすぎるし、自分が選んだ人のフォロー、また不始末の火消しもできない。昭恵夫人の行動にしても、総理の奥さんの行動すら管理できていない。安倍支持派はいまだに『改憲が出来るのは安倍さんしかいないんだから支え続けるべき』と言いますが、こんな加憲案しか出せないのなら、代わりの人はいくらでもいますよ」
※週刊ポスト2017年9月8日号