今夏の甲子園では、6本のホームランを放った広陵・中村奨成を筆頭に史上最多68本のアーチが乱れ飛び、スラッガー候補が大豊作だ。しかしスカウトは単に打撃技術のみに注視しているわけではない。「指名の判断基準には球団事情との兼ね合いも大きい」(在阪球団スカウト)という。
早稲田実業の清宮幸太郎がプロ志望を表明すれば1位指名球団は5~6チームあると予想されている。その理由は、圧倒的な打棒に加えて「集客力」の大きさにある。西東京大会決勝には神宮球場に3万人の観客を集めた。
「すでに中日の白井文吾オーナー、阪神の坂井信也オーナーがスカウト陣に獲得指令を出していると報じられている。話題性を考えれば喉から手が出るほど欲しいのは理解できます。ただしどこまで『獲得後』の青写真を描いているのか。
清宮はファースト以外守れない。しかし、阪神はこのオフのFAで中田翔(日本ハム)を獲得するといわれている。そうなると清宮を獲ってもファーストを守らせる機会は限られる。そういった事情が最終的な指名の判断に大きく影響する」(スポーツ紙記者)
その点、清宮を「生かす」ことのできる球団は限られているだろう。この夏の敗戦は“唯一のポジション”であるファースト守備の能力にも疑問符をつけた。
「西東京大会決勝の東海大菅生戦では、三塁手からのツーバウンドの送球を捕球できずに失点。最終回には短い距離での悪送球もあった。誰にでもミスはあるが、清宮は試合前のノックからいただけない。常にサイドスローのような投げ方で腰が入っていない。あるスカウトも『プロ基準のファースト守備になるには相当練習が必要だ』とこぼしていた。つまり清宮を獲得するならエラーを辛抱してでも使い続けることが必要になる」(同前)