「100万ドルの夜景」が堪能できるヴィクトリア・ピーク。眼下には近代的な高層ビルが立ち並び、眩い光を放ち、幻想的な雰囲気を作り出す。夜が明けて朝になれば、街の公園でおじいちゃん、おばあちゃんたちが太極拳に励み、繁華街の商店では家族そろって元気よくおしゃべりしながら点心を頬張る。ここは世界一の健康長寿を誇る街、香港である。
平均寿命は男性81.32才、女性87.34才。厚生労働省が7月に発表した平均寿命ランキングで、香港は昨年に続き男女とも世界の国・地域のトップに立った。長年、長寿国家として君臨した日本は男女とも2位となっている。
単に長生きするだけでなく、“健康で活動的に暮らせる期間”を示す「健康寿命」でも、国連の「持続可能な開発ソリューションネットワーク」が発表したランキング(2015年)では1位シンガポール、2位香港、3位日本だった。
だが、香港は昔から「健康大国」だったわけではない。イギリスから中国に返還された1997年の平均寿命は男性76.0才、女性81.3才と今より5才以上低く、1999年の時点では、65才以上の2人に1人が病院に長期入院していた。
この状況を改善するため、2000年から行政は「普及健体運動(健康推進プロジェクト)」を推し進めた。
「日日運動身体好(毎日運動すると体にいい)」のキャッチコピーで公園や体育館を増設し、食生活の改善や禁煙運動などに取り組んだ。名古屋学芸大学健康・栄養研究所所長の下方浩史さんが香港が長寿地域になりえた理由を説明する。
「健康的なレストランに有良認証を与える『有営食津(ヨウインシースー)』など、行政が積極的に健康政策を進めました。東京都の約半分の面積の香港は、政策が反映されやすかった。2003年にSARS(重症急性呼吸器症候群)が発生して、市民の健康意識が高まったことも成功の大きな要因です」
行政の取り組みと市民の意識がマッチした結果、香港は「長寿革命」を成し遂げた。
撮影/山形宗次郎
※女性セブン2017年9月14日号