蚊取り線香の原料は、除虫菊という小さな白い花。キク科の多年草で、殺虫作用のほか、最近の研究では、香りにリラックス効果もあると解明されつつある。ヨーロッパでは14世紀頃からノミ取り粉の原料として使われていた花に、日本でいち早く注目したのが、大日本除虫菊株式会社の創業者・上山英一郎だ。
和歌山のみかん農家に生まれた上山は、慶應義塾の恩師・福沢諭吉を通じてアメリカの種苗商から除虫菊の種を入手した。これを蚊の殺虫に使えないかと線香に練り込み、明治23年、世界初の蚊取り線香の商品化に成功。初めは棒状で折れやすく、燃焼時間も40分と短かった。また、3本燃やさないと殺虫効果も得られなかった。しかし、妻のゆきのアイデアで渦巻の形状に。7年越しで渦巻状の製品を開発し、燃焼時間は約6時間にも伸びた。昭和32年頃まで、職人が手で巻いていたという。
「最近はローズやラベンダーの香りも発売し、女性を中心に人気が。BBQなどアウトドアでも使っていただいています」(大日本除虫菊取締役宣伝部の北伸也さん)
※女性セブン2017年9月14日号