撮影は、昨年5月に12日間という短期間で行なわれ、激しいアクションもほぼスタントなしで演じきった。寝る間も惜しんで集中した日々を「まるでリオのカーニバルだった」と振り返る。
「特殊メイクに時間が取られるうえ、カット数も多くて、台詞も多い。最初は無理だと思ったんです。でも、予算も時間も限られた撮影現場で、みんなが集まってわーっと映画を作るのは、なんだかお祭りに似ている。ハードだったけれど、その時しか集まれないメンバーと充実した時間を過ごしました」
役者を目指したのは、27歳の時だった。JR東海の社員として愛知で働いていた田中は、銀幕の世界に憧れながらも、退職してまで飛び込む決心がつかずにいた。そんなある日、交通事故を起こしてしまう。
「幸いにも相手に怪我をさせず、自分も大事には至らなかったけれど、失敗するなら自分が選んだ道で失敗したいと思ったんです。翌日、会社に辞職したいと伝えました。今思えば、退職してからは怖いものがなくなって、どうにでもなれという気持ちでここまで来たのかもしれません」
すぐに上京したものの、役者になるアテはない。照明助手として入った映画『無能の人』の撮影現場で、初監督を務めていた俳優・竹中直人の目にとまり、端役でデビューする。以後、役者としての仕事を地道に増やし、『HERO』でブレイクしてからはバラエティーや旅番組と幅広く活躍する日々だ。大の猫好きとしても知られる。