「主役のお話をいただいたときは、嬉しかったです。でも、なんですかねぇ、若い頃なら舞い上がっていたかもしれないけど、もうこの歳で映画の主役は来ないだろうって、諦めていましたから(笑い)」
田中要次(54)が映画初主演を飾ったアクションホラー映画『蠱毒 ミートボールマシン』(西村喜廣監督)が、順次全国公開されている。人々が謎の寄生生物に操られ死闘を繰り広げる街で、田中は愛する女性を守るために戦う中年男を演じている。
「このくらいの年齢になると、若い頃から主役を演じてきた役者さんまで脇役に回り始めている。そんな流れの中で、今更主役をお願いされることはないと思っていました。ましてや、ヒロインに恋をする役なんてね。若い時は恋愛映画の主役に憧れた時もあったけれど、僕の中ではもう気持ちが冷めていて、今頃来たかという感じ(笑い)。でも恋愛と同じで、こちらが一方的に想っている時ほど願いは叶わない気がしているんです」
田中といえば、名脇役の印象が強い。2001年のドラマ『HERO』(フジテレビ系)では、どんな注文にも「あるよ!」のひと言で応じるバーテンダー役で存在感を示し、一躍有名になった。これまで300を超える作品に出演してきたが、意外なことにドラマで初めて主役を演じたのは2013年の『アウトドアロックンロール』(BS朝日)、50歳の時だった。今回が初の主演映画となるが、特に心境の変化はないという。
「周りから見て、アイツは天狗になっているって思われているかもしれないけれど(笑い)、自分が変わったつもりはありません。たとえば助監督が監督になったら『もう監督しかやらない』と貫き通す人もいるけれど、役者は『主演しかやらない』とは言い続けられないですから。 1カットしか出ない役をやっていた日々を忘れずに、謙虚にしていたほうがいいですよね」