無垢な魂は動物にだけでなく、幼い子供の霊にも宿る。一途ゆえにその執着は強く、その思いは時として、凶器にもなりえると、除霊師の伽羅さんは言う。ここでは伽羅さんが、霊たちが遺した“最期の愛”を報告する。
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私は数多くの霊と対峙してきましたが、あの少年の霊は、いまだに忘れられません。私のところに相談に訪れた女性は、30代というには老けていて、40代後半のようにも見えました。それだけ苦労を重ねてきたようで、幼い頃から病気がちで、友人もできなかったといいます。
ようやくできた彼と、22才の時に結婚を約束。ところが式の直前に彼が事故死。その後10年間、悲しみを引きずったものの、3年前に再び伴侶を得たそうです。しかしその彼も、半年前にがんを患い、若くして亡くなったそうです。2人の大切な人を亡くし、生きる希望がなくなった彼女は、手招きする少年の幻を見るようになったというのです。
私が彼女を霊視すると、5才くらいの少年が、彼女にとり憑いていました。
「これは強い悪霊だ」
少年からは禍々しい気を感じ、すぐに除霊をしないと、女性が危険だと感じました。私はまず少年の霊に、彼女にいつからとり憑いているのか尋ねました。とり憑いている年月が長いほど、影響力が大きいからです。
「20代の時から?」
首を振る少年の霊。
「10代?」「小学生の頃?」「幼稚園?」「赤ちゃん?」
それでも首をふる少年の霊。
「まさか生まれる前から?」
そう尋ねると、ニヤリと笑うのです。胎児にとり憑く霊は初めてでした。そこで私は、彼女の母親に目を向けました。調べてみると、母親には5才の頃に事故で亡くなった、幼馴染の少年がいたことがわかりました。
少年は彼女の母親をとても好きだったのです。彼女の母親が成長し、結婚し、子供をなすまでは、母親の側にいて、とり憑く隙を狙っていたのですが、それができなかったので、胎児にとり憑くことで、“自分を愛してもらおう”と思ったのです。しかし愛されるのは、あくまで生まれてきた“女の子”。彼ではありません。そこから憎しみがつのり、悪業が始まったのです。
私は少年の霊に、
「彼女を不幸にしたのはお前か?」
と尋ねました。すると、「そうだ」と返事が…。それで私はすぐに除霊をしました。
これで女性は幸せになれると思ったのですが、除霊を終えた彼女は泣きながら言うのです。「半身がなくなったみたいで、寂しい」と…。
生まれた時から30年以上一緒にいた霊。たとえ悪霊でも、長い時を共に過ごすと、とり憑かれた人は、自分の片割れのように霊に愛着を持つことがあるのです。
霊の一途すぎる思いは、こういった悲劇も生むのです。
※女性セブン2017年9月14日号