チンパンジーが樹の上に作る“ベッド”をヒントに考案された、斬新な形のベッドが誕生した。前後左右360度全方向に揺れる不思議なベッドは、IT企業の休憩室や温泉宿の露天風呂付個室にも採用されているという。霊長類の研究から生まれた『人類進化ベッド』(39万9600円)の寝心地とは――。
『人類進化ベッド』は、昨春、霊長類の研究で知られている京都大学で開催された特別展「ねむり展“眠れるものの文化誌”」で初展示され、国内外のメディアから一躍脚光を浴びた。だが当初は、市販化の予定はなく特別展のためだけに試作された作品だった。
試作のきっかけは、霊長類研究者の座馬耕一郎先生の発案から。チンパンジーにつくシラミの研究をしている座馬先生によると、チンパンジーはベッド職人。
アフリカ・タンザニアの森で、毎日、樹上で木の枝を使ってベッドを作っているのだという。ある日、そのベッドに寝そべってみたところ、あまりの寝心地の良さに感動。そこで、チンパンジーのベッドを再現するプロジェクトを始動させたのだ。そして、京都の寝具メーカー、イワタの社長・岩田有史さんと、デザイナーの石川新一さんと共に試行錯誤を重ね、約1年かけて作り上げたのが、『人類進化ベッド』だ。
一般的な四角く、平らで、動かないベッドとは異なり、楕円形で、中央がくぼみ、揺れる人類進化ベッドは、形状の斬新さと寝心地の良さに来場者の間でたちまち評判となり、京大にもイワタにも、発売の問い合わせが殺到。
そこで、今度は市販化に向けてプロジェクトを発足。安全性と快適性を追求し、まるで揺りかごのようなベッドの製作に成功した。今年5月、初回限定30台で予約受付を開始すると、約2か月で完売するほどの人気となった。
楕円形のマットレスは、幅115cm、奥行き160cmのコンパクトサイズ。前後左右・全方位に揺れると聞くと、カラダがベッドからはみ出したり、転げ落ちるのではないかと気になるが、ご心配には及ばない。
計算しつくされた構造で、転げ落ちたりひっくり返ったりしないようになっている。また、マットレスのふちの部分は、枕にもなるよう厚みを持たせてあるため、手足がはみ出しても気にならない。
というより、腰痛の人が膝の下にクッションを入れて寝るときと同じような体勢になるため、むしろ快適なのだ。寝返りを打つとゆっくりと揺れ、波の穏やかな海に浮かんでいるような、心地よい浮遊感を感じることができる。
インターネットが使えないからと、手書きの手紙で予約を入れた70代のご夫婦や、遠方だから実物は見られないが購入したい、といった顧客からの熱烈なリクエストもあるという。
不眠症や腰痛にお悩みのかた、快適な睡眠を手に入れたい人は、ぜひ一度、このベッドの寝心地を試していただきたい。自由気ままなチンパンジー気分も味わえます。
※女性セブン2017年9月14日号