イギリスのロンドンで今年発生した高層マンション火災では、犠牲者が100人を超す大惨事となった。日本でも2016年の総出火件数は3万6831件、火災による総死者数は1452人にものぼり(※消防庁『平成28年(1月~12月)における火災の状況(確定値)』より)、特に東京都ではタワーマンションでの火災がこの10年で80件以上発生している。
高層マンションが続々建設される昨今、火災が起きた時にどう対応すべきか。専門家に話を聞いた。マンション火災の際の注意点を、危機管理アドバイザーの国崎信江さんはこう語る。
「マンションでは、住人みんなが運命共同体。マンションには住宅用火災警報器や自動火災報知設備があるので、まずは初期消火を試みます。そして、非常ベルを鳴らすか、応援に来てくれた人に119番通報を求めてください。避難時はできるだけ声をかけて逃げましょう」
また、東京消防庁の仲三河健一さんはこう話す。
「消火をしても消えない場合、火災元の部屋の扉を閉めて避難を。日本のマンションは1住戸で燃え収まるように防火区画が施されているので、扉を閉めれば延焼を防げます」
初期消火にはできるだけ消火器を使用する。水をかけると火元が電気機器の場合は感電したり、油の場合は燃え広がったりして危険だからだ。
「投げ入れタイプの消火器具は扱いが簡単でおすすめ。火元に近寄らず、投げてすぐに避難できます」(国崎さん)
避難する際は、非常階段で逃げるのが安全で、エレベーターは使用しないこと。エレベーターなどの個室には煙が侵入しやすく、さらに電気が断線すると閉じ込められる恐れがあるからだ。
「火災で怖いのは炎よりも煙です。今は建具や壁紙、家具、家電などに化学物質を含む素材が使われ、燃えると一酸化炭素を含む有毒ガスが発生します。この煙を吸うと痙攣や麻痺を起こし、動けなくなります。だからこそ一刻も早い避難が必要です」(国崎さん)
また、非常ベルが鳴っても、誤報だと侮り、逃げ遅れて命を失う人が大勢いる。非常ベルが鳴ったら火災だと思って逃げることも大切だという。
「火災の時は非常階段を使用し、避難することが重要です。非常階段に物が置かれていると避難時に障害となったり、階段部分に置かれた物が燃えたりして、避難の際に階段が使用できなくなります。その際は階段ではなく避難はしごを利用すべき。はしごのあるベランダに物置などがあると避難通路を妨げてしまうので、ベランダには物を置かないこと」(仲三河さん)
現在、11階以上のマンションでは、燃え広がりを少しでも防ぐため、全階の住人に防炎製品を使用することが義務づけられている。共同生活をするマンションでは、火災予防の備えを住人一人ひとりが行うことが大切だ。
※女性セブン2017年9月14日号