親や子、兄弟などが相続で揉めるのは、決して現代だけの話ではない。室町幕府では、将軍の座を巡って前代未聞の事態が起こったことがある。
室町幕府の5代将軍・足利義量(よしかず)は、病弱なのに酒好きだったことがたたり、19歳の若さで他界した。次期将軍を誰に託すかは隠居していた4代将軍・義持の判断に委ねられるも、「どうせ私が決めても誰も納得しないだろう」と後継指名をしないまま義持まで死去。歴史研究家で多摩大学客員教授の河合敦氏が解説する。
「義持の4人の弟が跡継ぎ候補となり、家臣が石清水八幡宮でくじ引きを行なって次期将軍を決定した。征夷大将軍がくじ引きで決まったのは後にも先にもこの時だけで、選ばれた足利義教は、“くじ引き将軍”と呼ばれました。
義教は出家しており、還俗して将軍になる気など毛頭なかった人物。しかしその後、将軍職の重圧のためか暴君となって大勢の人間を処刑する恐怖政治を行なった挙げ句、家臣の一人に殺された。“くじ引き家督相続”は大きな禍根を残しました」
※週刊ポスト2017年9月15日号