ちょっと具合が悪い程度なら、病院に行かず薬局で買える「市販薬」で済ませることが多いだろう。だが、その使い方を間違えるとかえって症状を悪化させる結果を招くことがある。
たとえば「下痢止め」で下痢が悪化することがある。お腹を壊しやすい人にとって市販の下痢止めは手離せない薬だが、腹痛の原因によっては逆効果になる。『その「1錠」が脳をダメにする』の著者で薬剤師の宇田川久美子氏が語る。
「O-157やノロウイルスなどの感染症が原因の場合は、決して下痢止めを使ってはいけません。ウイルスや細菌が腸内で活動しているときに下痢止めを服用して排泄を止めると、それらが長期間腸内にとどまって腹痛や下痢が長期化します」
慢性的な下痢や過敏性大腸炎の場合も、市販の下痢止めの服用は“緊急避難”的なものに留めるべきだという。
「下痢止めを服用し続けると、有効成分への耐性がついてしまい、肝心なときに効かなくなりやすい。3日以上下痢が続く場合には、市販薬の服用をやめ、消化器の専門医を受診すべきでしょう」(同前)
「便秘薬」で便が出にくくなることもある。高齢になるほど運動量が減り、喉の渇きを自覚しにくくなるため、水分補給が減って便秘になりやすいといわれる。
しかし、薬剤師の堀美智子氏によれば、市販の便秘薬のなかでも「大腸刺激性下剤」を使う際には気をつけるべきことがあるという。
「大腸刺激性下剤は、大腸の蠕動運動(伸縮)を刺激することで排便を促します。しかし、このタイプの便秘薬は、便意が突発的に来るのが特徴です。そのときにきちんと便を出せれば良いのですが、タイミングが合わずに我慢してしまうと、今度は『直腸型便秘』という別の便秘になるリスクが増加する。自宅などいつでもトイレに行ける環境で服用することが大切です」
※週刊ポスト2017年9月15日号