かつて「浪曲は死んだ」とまで言われたが、最近、浪曲の世界に変化が訪れている。寄席などで興味を持った女性客が、関東唯一の定席・木馬亭(東京・浅草)に増えつつあるのだ。今の浪曲界で注目の個性豊かな3人の浪曲師を紹介しよう。
●天中軒雲月(てんちゅうけんうんげつ)
「常に舞台は戦場だと思え」
5代目天中軒雲月は若い時、そうやって仕込まれてきた。実際、昔は売れてくると嫌がらせで湯呑みに水銀を入れられた。それを飲むと声が出なくなる。まさに「食うか食われるかの世界」だったという。
「10年前はマイクのボリュームを下げられたりもしましたが、今は人も浪曲の世界も変わりました」
雲月が今、熱心に取り組んでいるのは浪曲会のプロデュースとSNSによる情報発信だ。
「若い人を勉強会で競わせ、いろんな業界の人とカップリングをして浪曲を広めたいんです。でも、うちの弟子たちは自分の舞台があるのに宣伝しない。たまに書く程度。私の修業中にはSNSなんてなかったので、楽しみながらやっています」
【プロフィール】岐阜県生まれ。1968年2月、四代目天中軒雲月に入門。2009年に現在の名跡を襲名。