犯罪と国民性は切っても切れない関係性がある。となれば、この事件には考えさせられる部分が少なくない。中国の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏が指摘する。
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中国における「格差」は拡大の一途だ。ある意味それを象徴するひとつの事件を紹介しよう──。湖北省韓垸村の村民からの通報を受けた武穴田鎮派出所の警官たちは、駆け付けた先の部屋のベットで大胆にも眠り込む空き巣と遭遇した。6月7日夜9時過ぎのことである。地元『楚天都市報』(6月11日付)が伝え、全国に広がったニュースは大きな話題となった。
記事のタイトルは、〈空き巣に入った先のベッドで熟睡 俺は疲れすぎた〉だった。
かつての日本でも説教強盗など、ユニークなケースはあったが、警官が駆けつけてもなお眠り続けた泥棒というケースは聞いたことがない。
21歳のこの空き巣男、事情を訊ねる警官に対し「すっかり疲れてしまって……」とタイトル通りの告白をしたというのだが、そうなると気になるのが、なぜそれほどまでに疲れてしまっていたのか、ということだろう。北京の夕刊紙記者が語る。
「朱と名乗ったその男は、湖北省島南部の蘄春県出身で、今年の春節(旧正月)に家族と大喧嘩して家出をしていたということです。6月に捕まるまで約4か月間、ずっと空き巣を繰り返していたのでしょう。すっかり疲れたというのは、彼が本物の空き巣ではなかったということです。彼は侵入当初、金目の物を物色したのですが、現金もなければ他にめぼしいものもなかったといいます。
それで、ガッカリした瞬間に、自分がとても飢えていて、また疲れていることを感じたといいます。結局、盗みに入った家で、彼が現金の次に欲しかった温かいベッドに横たわったら止まらなくなったということでした」
朱は、家出をした時と同じ上下の衣服を身につけていたというから、空き巣はあまりうまくいかなかったのだろう。