発売から2か月で、早くも4刷が出来。日を増すごとに反響が大きくなっている『なんとめでたいご臨終』(小学館)。
著者・小笠原文雄さんが院長を務める小笠原内科(岐阜県)には、『なんとめでたいご臨終』を読んだ読者から、在宅医療に関する問い合わせが相次いでいるという。はるか遠い大分県に住む女性も読者はがきにこう綴った。
「私も、最期は小笠原先生に相談します。この本は手許に保管しておきます」
小林麻央さんが最期に選んだことでも注目を浴びている在宅医療。いまだ誤解や玉石混淆との指摘も多いことから、小笠原さんへの期待は高まるばかりだ。しかし、小笠原さんが会長を務める日本在宅ホスピス協会会員をはじめ、在宅医療に真摯に取り組む医師は確実に増えている。実際、大切な家族が最期まで自宅で過ごして「めでたいご臨終」を遂げた──そう読者はがきに綴っているかたも少なくない。
「主人を在宅医療で2年看て、病院嫌いの主人も笑って過ごせました。本当にこの本に書いてあった通りでしたので、うなずきながら読みました。小学5年生の孫も読みました」(76才・女性)
「実の母が、まったく自分の思うように亡くなっていますので、娘としての後悔なく、幸せな見送りができていました。自分もそういう最期にしたいと思い、みなさんはどういうふうに過ごしたか、知りたかったのです。よかったです」(62才・女性)
「おひとりさまでも、がんになっても、ボケてても…母がこの通りのご臨終でした。ひとり暮らしの母親の最期が少しでも知りたくて、書店で見つけて購入しました」(67才・女性)
みなさんが「この通りのご臨終だった」と一様に綴るのは、本書に収録された「お別れの日に向けて~やすらかな看取りのために~」(お別れパンフ)のこと。これはお別れの時が近づいたご家族に、小笠原内科で実際に渡しているものだ。
〈さまざまなご苦労を乗り越えて、ご自宅での療養を続けてこられましたが、症状の変化から少しずつお別れの時が近づいてきていることが、ご家族のみなさまにも察していただけると思います〉
というご家族への語りかけから始まるお別れパンフには、この先どんな症状の変化があるのか、その時、慌てないためにどのように対処すればいいのかが具体的に記されている。例えば、こんな具合だ。
*食欲がなくなり、ほとんど食べなくなったり、眠っている時間が多くなったりします。
*口が乾燥して言葉が出にくくなり、痰がきれにくくなります。氷やぬらした綿棒などで口をしめらせると、少しはしゃべれることもあります。
そして息を引き取られる時にどんなことが起きるか。
〈ほとんど、眠っておられるようになってきます。そのうち呼んでも、さすっても、反応がなく、ほとんど動かなくなります。大きく呼吸した後、10~15秒止まって、また呼吸をする波のような息の仕方になります(後略)〉
ここで重要なのは、耳は最期まで聞こえているということ。本書には、お別れの時が近づき意識がなくなったご主人に、大好きだった『津軽海峡・冬景色』を奥さんが聴かせたら、意識を取り戻すどころか歌い出した──そんな信じられないようなエピソードも紹介されている。
めでたいご臨終は、願えば叶うものになりつつあるのだ。
※女性セブン2017年9月14日号