臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になった著名人をピックアップ。記者会見などでの表情や仕草から、その人物の深層心理を推察する「今週の顔」。今回は、結局、詐欺罪で告発されることとなった橋本健元神戸市議のあの会見をプレイバック。
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政務活動費の架空請求疑惑で議員辞職した橋本健元神戸市議が、全ての疑惑を認めた。会見では疑惑を完全否定しながらも、口裏合わせのメールが露見。領収書を発行した印刷仲介会社は関与を否定と、次々にボロが出てきた橋本氏。そこで改めて、会見の際に見え隠れしていた彼の嘘のサインについて細かくチェックしてみる。
「嘘の大半は会話でばれる」、社会心理学者のピーター・コレットがそう言っているように、もっとも嘘を見抜くサインとなるのが話し方や内容だ。橋本氏の場合、架空発注について聞かれると「否定させていただきます」と答えたものの、言い切る前に次に言葉を続けた。さらに否定するものの、今度は語尾がはっきりせず、ごにょごにょと言葉を濁してしまう。
今井絵理子議員との不倫疑惑の際、「一線を越えていません」と汗だくで言い切ったのは、守りたい人がいたからだ。だが今回、守るべきは自分だけ。やはり、無意識では嘘をつくことにストレスを感じていたのだろう。明確に否定するはずが、語尾をはっきりさせず、言葉を濁してしまう。「〜と思う」という言い方も多く、説明が曖昧でぼやけた印象。嘘をつきながらも、嘘をつきたくないという無意識の葛藤が、こんな受け答えの中にも見えていた。
「おっしゃる通りでございます」「申し訳ございませんが」を枕詞のように使って答えることも多かった。頻繁に「ごめんなさい」と謝ってもいた。これらは、「あなたたちが疑いを持つのはもっともだけど、そんなことはありません」と疑念を打ち消したいがための言葉だ。
また、不可解な領収書については、「2か所に払われていて領収書が1枚なのは解せない」と問われると、同じ質問を繰り返してつぶやき、視線を泳がながら、質問の意味がすぐには理解できず考えるような仕草を見せた。質問を繰り返す、難しくない質問なのに意味が理解できない素振りを見せるのも、嘘をついているサインといわれる。
人の動作の中で一番信用できないものは言葉だと、動物行動学者のデズモンド・モリスも言うように、彼の言葉の端々にも嘘が見え隠れする。「領収書を発行した会社が架空会社では?」との疑惑には、実在すると否定。ところが、会社については「個人業者なのかわからない」と説明したのだ。領収書をまとめた2社のうち、どちらの印刷会社が主かと聞かれ、「どちらが主か存じ上げない」と返答。自分が足を運んで何度も発注したと主張したのに、どんな会社なのか、どちらが主なのかわからないというのはおかしな話だ。