貧困問題は日本でもよく叫ばれるようになっているが、中国の場合はさらにシリアスだ。現地の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。
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中国人観光客の見せる“爆買い”パワーが、世界の話題となって久しい。いまや、中国に付きまとってきた「貧困」とイメージは遠のきつつある。
だが、中国政府はいまだ米中関係に触れるとき「最大の先進国と最大の発展途上国」という表現を使うように、国内にはまだまだ「貧困」を象徴する出来事が溢れている。
というわけで、中国の一部の富裕層の生活とは真逆の、貧困地区発のニュースを見てみたい。
浙江省嘉興市湖南区でおきた事件である。このニュースについては多くの説明は必要ない。ニュースを伝えた新聞の見出しがすべてを語っている。
〈兄弟二人がゴミ焼却場で病死した父親を焼く 高い火葬代金を節約するため〉
『澎湃新聞ネット』(6月9日付)が伝えている。
少し情報を補足すれば、焼かれた父親は雲南省から出稼ぎに来ていた農民で、死亡時の年齢は53歳と若かった。病死に疑いはないものの、死亡時は病院ではなく賃貸していたアパートの部屋であったことから病院に行くお金もなかったと推測されている。
兄弟の年齢は明らかにされていないが、二人も同じように困窮していたことは想像に難くない。
結局、彼らが節約しようとした火葬の費用は310元、遺体の運搬費用を含めても600元前後(1万円)だったという。
二人はこのお金が捻出できずに相談した結果、「二人で焼こう」ということに落ち着いたようだ。二人は最終的に地元警察に死体侮辱罪で逮捕された。