清宮幸太郎(早稲田実業)、中村奨成(広陵)、安田尚憲(履正社)……プロのスカウトの注目を集める怪物たちが揃ったU-18ワールドカップの現場で、異質な“存在感”を放つ女性たちがいた。はるかカナダまで応援に駆けつけた怪物の母親たちである。ノンフィクションライターの柳川悠二氏は一つの共通点を見出したという。
* * *
中村奨成を女手ひとつで育てた母・啓子さんの姿はU-18ワールドカップ開催地であるカナダ・オンタリオ州サンダーベイにはなかったものの、現地まで応援に訪れていたのは、不思議と高校からプロ入りを目指す選手の母親が多かった。
田浦文丸(秀岳館)の母もそのひとり。4試合目が終わって帰国したため話を聞くことはできなかったが、母の滞在中、3試合に登板した息子は、計9回を投げて19三振を奪った。右打者から見れば逃げるように落ちていくチェンジアップに、外国人打者のバットが面白いように空を切った。
あるスカウトは言った。
「下位指名候補だったのが、2つは順位が上がった。現時点では上位候補とは言えないかもしれませんが、この大会の活躍によって年俸と契約金で2000万円ぐらいは上がったのでは」
10月26日のドラフト会議を心待ちにする選手にとっては、全12球団のスカウトが揃うW杯は最後のアピールの場であり、今後の人生を左右する大会となる。
母親たちがつい熱くなり過ぎるのも、無理はない。
※週刊ポスト2017年9月22日号