関ケ原古戦場を世界三大古戦場のひとつに位置づけ、観光に活かしたいと報じた新聞記事に、評論家の呉智英氏は大きな違和感を抱いた。なぜ、その新聞記事を異様だと感じたのか。具体例をあげながら呉氏が掘り下げた。
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8月30日付の朝日新聞「天声人語」が異様なことを書いている。
岐阜県と同県関ケ原町とが関ケ原古戦場を世界三大古戦場の一つとした。あとの二つはワーテルローとゲティスバーグ。県と町は昨春、この二都市を招いて古戦場サミットを開いた。「歴史の授業で有名なわりに観光にいかせていない」と「歯がゆさがあった」という。記事は「世界3大の名乗りは気宇壮大」と声援を送る。
私は、この「天声人語」が掲載されるや、朝日新聞と岐阜県・関ケ原町に全国から抗議の声が殺到するのではないか、と思っていたが、今に至るまでその気配はない。全国の反戦運動家の諸君は、何をやっておるのか。明々白々の戦争礼讃、しかも背後には観光資本の貪欲な営利追求主義もある。
ワーテルローはナポレオンの野望を打ち砕く抵抗戦争と言えば言えなくもないし、ゲティスバーグは黒人解放戦争の始まりと言えば言えなくもない。すべての戦争は悪である、正義の戦争などない、という絶対平和思想がある。私はこの思想にそれなりの意義は認めるものの、賛成することはできない。抵抗戦争、解放戦争は、やはり支持したい。